兄弟で相続した空き家、全員の意見が合わない…共有名義の不動産はどう処分する?
「親が亡くなって実家を兄弟3人で相続したが、長男は売りたい、次男は残したい、三男は関心がない。話し合いがまとまらず、もう2年が経ってしまった…」
こうしたご相談は非常に多く寄せられます。空き家を複数の相続人で共有している場合、たった1人でも反対すると何もできないというのが、共有名義の最大の問題です。
この記事では、共有名義の空き家が抱える法律上の問題と、それを解決するための選択肢を整理してお伝えします。
共有名義とは
共有名義とは、一つの不動産を複数の人が共同で所有している状態のことです。たとえば、親が亡くなり、子ども3人で遺産分割協議を行わないまま法定相続分どおりに相続登記をすると、3人がそれぞれ3分の1ずつの持分を持つ「共有名義」になります。
また、遺産分割協議自体を行わないまま放置していても、法律上は相続人全員が法定相続分に応じた共有状態にあるとみなされます。
共有名義の不動産でできること・できないこと
共有名義の不動産では、行為の種類によって必要な同意の範囲が異なります(出典:民法第249条〜第264条)。
| 行為の種類 | 必要な同意 | 具体例 |
|---|---|---|
| 保存行為 | 各共有者が単独で可能 | 雨漏りの修繕、不法占拠者の排除 |
| 管理行為 | 持分の過半数の同意 | 賃貸借契約の締結(短期)、小規模修繕 |
| 変更(処分)行為 | 共有者全員の同意 | 売却、建物の解体、大規模リフォーム |
ここが最大のポイントです。空き家を売却するには、共有者全員の同意が必要です。たとえ3人中2人が売りたいと思っていても、1人が反対すれば売却はできません。解体も同様です。
よくあるトラブルパターン
パターン1:「売りたい人」と「残したい人」の対立
「思い出のある実家を手放したくない」という感情と、「管理の負担や税金がもったいない」という合理的判断がぶつかるケースです。どちらの気持ちも理解できるだけに、話し合いが感情的になりやすく、長期化します。
パターン2:連絡が取れない共有者がいる
兄弟の中に海外に住んでいる人、行方が分からない人がいると、そもそも協議を始めることすらできません。
パターン3:次の世代に問題が持ち越される
共有者の1人が亡くなると、その持分がさらにその相続人に引き継がれます。3人の共有が、次の世代では5人、10人の共有になることもあり得ます。世代を経るほど関係は希薄になり、合意形成はますます困難になります。
パターン4:管理費用の負担が不公平
空き家の管理(草刈り、修繕、固定資産税の支払いなど)を特定の共有者だけが行っている場合、不公平感からトラブルに発展することがあります。
共有名義の空き家を処分する5つの方法
方法1:共有者全員で合意して売却する
最もシンプルな方法です。全員が売却に同意すれば、通常どおり不動産を売却できます。売却代金は持分に応じて分配します。
話し合いがまとまらない場合は、第三者(不動産会社や弁護士)を交えて協議を行うと、感情的な対立が緩和されることがあります。
方法2:持分を他の共有者に売却(買取)してもらう
「自分は早く手放したいが、他の共有者は保有を続けたい」という場合、自分の持分だけを他の共有者に買い取ってもらう方法があります。
たとえば3分の1の持分を持っている場合、残りの2人のどちらかに売却すれば、自分はその不動産から離脱できます。
方法3:持分を第三者に売却する
法律上、共有持分だけを第三者に売却することも可能です。「共有持分の買取」を専門とする不動産業者も存在します。
ただし、注意点があります。持分だけでは不動産全体を自由に使えないため、市場価格の大幅な割引(一般的に5〜7割程度)になることが多いです。また、知らない第三者が新たな共有者になることで、残りの共有者との関係がさらに複雑になる可能性もあります。
方法4:共有物分割請求を行う
話し合いでまとまらない場合の最終手段として、裁判所に「共有物分割請求」を行うことができます(出典:民法第258条)。
裁判所は以下のいずれかの方法で分割を命じます。
- 現物分割:土地を物理的に分ける方法。ただし、建物がある場合は困難なことが多い
- 代償分割:共有者の1人が他の共有者に対価を支払って全部を取得する方法
- 競売(換価分割):裁判所の命令で不動産を競売にかけ、売却代金を分ける方法
競売になると、一般的に市場価格よりも安い価格での売却になります。できれば競売に至る前に、話し合いで解決する方が経済的には有利です。
方法5:共有者間で持分を贈与・放棄する
不動産を保有する意思がない共有者は、自分の持分を他の共有者に贈与したり、持分の放棄を行ったりすることもできます。持分を放棄すると、その分は他の共有者に帰属します(出典:民法第255条)。
ただし、贈与を受ける側に贈与税がかかる場合があるため、税務面の確認が必要です。
相続放棄は共有名義の解消に使えるか
「空き家なんて要らないから、相続放棄すればいい」と考える方もいますが、注意が必要です。
相続放棄は、相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります(出典:民法第915条)。期限を過ぎると原則として放棄はできません。
また、2023年4月の民法改正により、相続放棄をした場合でも「現に占有している」場合は引き続き管理義務を負うとされています(出典:民法第940条、2023年4月1日施行)。つまり、相続放棄をしても、実際にその空き家を管理している状態であれば、管理義務から完全に逃れることはできないのです。
共有名義の問題を長引かせないために
共有名義の問題は、時間が経つほど解決が難しくなります。以下の点を意識しておくことが大切です。
1. 早期に話し合いの場を設ける
相続が発生したら、できるだけ早い段階で共有者全員で今後の方針を話し合いましょう。時間が経つと、それぞれの事情や考えが変わり、合意が難しくなります。
2. 第三者を交える
家族間の話し合いは感情的になりやすいものです。不動産会社や弁護士など、中立的な立場の第三者を交えることで、冷静に話を進められることがあります。
3. 費用負担を明確にする
共有状態が続く間の固定資産税や管理費用の分担を、書面で明確にしておきましょう。口約束だけでは後々のトラブルの種になります。
4. 次の世代に持ち越さない
共有名義の問題を自分たちの世代で解決しておくことは、子どもや孫に対する責任でもあります。
まとめ
共有名義の空き家は、全員の同意がないと売却も解体もできないため、問題が長期化しやすいのが特徴です。しかし、持分の売却、共有物分割請求など、解決のための法的手段は複数あります。
大切なのは、問題を先送りにしないことです。2024年4月から相続登記も義務化され(期限は相続を知ってから3年以内)、放置のリスクはますます高まっています。
株式会社玄風では、共有名義の空き家に関するご相談を多数お受けしています。顧問弁護士と連携して、共有者間の調整から売却・解体の実施まで一貫してサポートいたします。「兄弟で意見が合わない」「どう話を切り出せばいいか分からない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。