「共有名義」は絶対避けて!相続不動産のトラブル事例と解決策

「遺産分割がまとまらないから、とりあえず兄弟で共有名義にしておこう」

相続の現場では、この「とりあえず共有」が非常に多く見られます。しかし、不動産の共有名義は将来のトラブルの種です。私たちは不動産会社として、共有名義が原因で身動きが取れなくなったご家族を数多く見てきました。

この記事では、共有名義がなぜ問題なのか、そしてどう解消すればよいのかを解説します。


共有名義とは?

共有名義とは、一つの不動産を複数の人が持分に応じて共同で所有している状態のことです。

たとえば、お父様が亡くなり、長男・次男・長女の3人が実家を相続した場合、それぞれ3分の1ずつの持分で共有名義にすることがあります。

法定相続分どおりに登記すれば手続きは簡単ですし、遺産分割協議で揉めなくて済みます。しかし、この「簡単さ」が後々大きな問題を引き起こすのです。

共有名義の5つの問題

問題1:売却に全員の同意が必要

共有不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要です(民法第251条)。一人でも反対すれば売れません。

「兄は売りたいが、弟は思い出があるから残したい」──こうなると話は平行線です。全員の同意を得るのは、人数が多くなるほど困難になります。

問題2:管理費や固定資産税の負担で揉める

共有物の管理費用は、各共有者がその持分に応じて負担する義務があります(民法第253条)。しかし実際には、「兄が住んでいるのだから兄が全額払うべきだ」「固定資産税の請求が来たけど弟が払ってくれない」といったトラブルが起きがちです。

問題3:共有者の一人が亡くなると権利が細分化する

共有者の一人が亡くなると、その持分がさらにその相続人に引き継がれます。

たとえば、兄弟3人で3分の1ずつ共有していた不動産で、長男が亡くなり長男の妻と子2人が相続すると、共有者は5人になります。世代を重ねるごとに共有者がねずみ算式に増えていくのです。

数十年後には共有者が数十人に膨れ上がり、「全員の同意を得て売却する」ことが事実上不可能になるケースも珍しくありません。

問題4:持分だけでは住宅ローンが使いにくい

共有持分だけを担保に住宅ローンを組むのは非常に困難です。金融機関にとっても、共有不動産は担保価値が低いと判断されるためです。

問題5:共有者間の関係悪化

「とりあえず共有」にした時点では仲の良い兄弟でも、年月が経つにつれて考え方の違いが表面化し、関係が悪化するケースが少なくありません。配偶者が介入することでさらに複雑になることもあります。

共有名義を解消する4つの方法

すでに共有名義になってしまっている場合は、以下の方法で解消を検討しましょう。

方法1:換価分割(売って分ける)

不動産を売却し、売却代金を持分に応じて分配する方法です。

全員が「売る」ことに同意できるなら、最もシンプルな解決策です。不動産そのものは手放すことになりますが、現金で公平に分けられるため、しこりが残りにくい方法です。

方法2:代償分割(一人が取得し、他の人にお金を払う)

共有者の一人が不動産を単独で取得し、他の共有者に対して持分相当額の金銭を支払う方法です。

たとえば、3,000万円の不動産を3分の1ずつ共有している場合、長男が単独取得し、次男と長女にそれぞれ1,000万円ずつ支払います。

不動産を残したい人がいる場合に有効ですが、取得する側にまとまった資金が必要です。

方法3:分筆(土地を物理的に分ける)

土地を複数の筆に分けて、それぞれ単独名義にする方法です。

ただし、分筆するには土地の形状や面積に一定の条件があり、建物が建っている場合は現実的でないこともあります。また、分筆後の各土地の価値に差が出ないよう、慎重な調整が必要です。

方法4:持分の買取

共有者の一人が他の共有者の持分を買い取る方法です。代償分割に似ていますが、すでに遺産分割が完了した後に行う点が異なります。

持分の買取価格は、不動産全体の時価に持分割合を掛けた金額が目安ですが、実際には交渉次第です。

話し合いがまとまらない場合:共有物分割請求

共有者間で話し合いがまとまらない場合は、裁判所に共有物分割請求を申し立てることができます(民法第258条)。

裁判所は、以下のいずれかの方法で分割を命じます。

  1. 現物分割:土地を物理的に分ける
  2. 競売による分割(換価分割):裁判所の命令で競売にかけ、代金を分配する
  3. 価格賠償(全面的価格賠償):一人が取得し、他の人に金銭を支払う

共有物分割請求は法的手続きですので、弁護士への依頼が必要です。

そもそも共有名義にしないために

最善の対策は、遺産分割の段階で共有名義にしないことです。

  • 換価分割:不動産を売却して現金で分ける
  • 代償分割:一人が取得し、他の相続人にお金を払う
  • 遺言書:生前に誰がどの不動産を取得するか指定しておく

「とりあえず共有」は問題の先送りに過ぎません。遺産分割協議の段階で、不動産の帰属先を明確に決めておくことが大切です。

まとめ

  • 共有名義は「売れない・揉める・権利が細分化する」三重苦
  • 解消方法は「換価分割・代償分割・分筆・持分買取」の4つ
  • 話し合いがまとまらなければ、共有物分割請求という法的手段がある
  • そもそも共有名義にしないことが最善策

出典:民法第251条(共有物の変更)、第253条(共有物に関する負担)、第258条(裁判による共有物の分割)


玄風では、共有名義の不動産に関するご相談を、顧問弁護士と連携して承っております。「共有のまま放置してしまった」「兄弟間で意見が合わない」など、お困りのことがあればお気軽にご連絡ください。

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