遺言書があればこんなに違う!自筆・公正証書・法務局保管を徹底比較
「遺言書なんて、大げさじゃない?」「うちはそんなに財産がないから必要ない」
そう思われる方は多いのですが、実は遺産分割のトラブルは財産の多寡に関係なく起こります。裁判所の司法統計によると、遺産分割調停の約76%は遺産額5,000万円以下のケースです。
遺言書が一通あるだけで、残されたご家族が争わずに済むことは珍しくありません。この記事では、遺言書の主な3つの方式を比較し、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
遺言書がないとどうなる?
遺言書がない場合、遺産は法定相続分に従って分けるか、相続人全員で遺産分割協議を行って分け方を決めることになります。
遺産分割協議は相続人全員の同意が必要です。一人でも反対すれば成立しません。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の調停・審判に進むことになり、解決までに1年以上かかることも珍しくありません。
遺言書があれば、原則として遺言の内容に従って遺産が分配されるため、遺産分割協議そのものが不要になります。これだけでも、ご家族の負担は大きく軽減されます。
遺言書の3つの方式
一般的に利用される遺言書の方式は、主に以下の3つです。
1. 自筆証書遺言(自分で書く)
遺言者が自分の手で全文・日付・氏名を書き、押印する方式です。最も手軽に作成できます。
なお、平成31年(2019年)の法改正により、財産目録についてはパソコンで作成したものや、通帳のコピーを添付することが認められるようになりました(ただし、各ページに署名・押印が必要です)。
メリット
- 費用がかからない(紙とペンがあればよい)
- いつでもどこでも作成できる
- 内容を誰にも知られずに作れる
デメリット
- 書き方を間違えると無効になるリスクがある
- 紛失・改ざんの恐れがある
- 相続開始後に家庭裁判所で「検認」手続きが必要(法務局保管を除く)
2. 公正証書遺言(公証人に作ってもらう)
公証役場で公証人が作成する遺言書です。遺言者が口述した内容を公証人が文書にまとめ、証人2人の立会いのもとで作成されます。
メリット
- 公証人が関与するため、形式不備で無効になるリスクが極めて低い
- 原本が公証役場に保管されるため、紛失・改ざんの心配がない
- 家庭裁判所での検認が不要
- 遺言者が字を書けない場合でも作成可能
デメリット
- 費用がかかる(財産額に応じて数万円〜十数万円)
- 公証役場に出向く必要がある(出張も可能だが追加費用あり)
- 証人2人が必要(相続人や受遺者は証人になれない)
3. 法務局における自筆証書遺言書保管制度
2020年7月から始まった比較的新しい制度です。自筆証書遺言を法務局に預けることで、安全に保管してもらえます。
メリット
- 保管手数料が3,900円と安い
- 法務局で形式をチェックしてもらえる(内容の有効性の保証ではない)
- 紛失・改ざんの心配がない
- 家庭裁判所での検認が不要
- 相続開始後、関係相続人に通知される仕組みがある
デメリット
- 遺言者本人が法務局に出向く必要がある(代理人不可)
- 内容面のアドバイスはもらえない
- 自筆で全文を書く必要がある(財産目録を除く)
3つの方式を一覧で比較
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 法務局保管制度 |
|---|---|---|---|
| 作成者 | 本人 | 公証人 | 本人(保管は法務局) |
| 費用 | ほぼ無料 | 数万円〜 | 3,900円 |
| 証人 | 不要 | 2人必要 | 不要 |
| 形式不備のリスク | 高い | 極めて低い | やや低い |
| 紛失・改ざんリスク | 高い | なし | なし |
| 検認 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 秘密性 | 高い | やや低い | 高い |
| 字が書けない場合 | 不可 | 可 | 不可 |
検認手続きとは?
検認とは、自筆証書遺言(法務局保管を除く)が見つかったときに、家庭裁判所で行う手続きです。遺言書の状態を確認し、偽造・変造を防止するためのものです。
検認は遺言書の「有効・無効」を判断するものではありませんが、相続手続きを進めるために必要な手続きです。
検認の手続きには、以下の負担があります。
- 相続人全員の戸籍謄本を集める必要がある
- 家庭裁判所への申立てが必要
- 申立てから検認期日まで1〜2ヶ月程度かかる
- 検認期日に出席が必要(欠席しても手続きは進む)
公正証書遺言や法務局保管の自筆証書遺言であれば、この検認手続きが不要になり、すぐに相続手続きに入ることができます。
どの方式がおすすめ?
確実さを重視するなら:公正証書遺言
費用はかかりますが、形式不備で無効になるリスクが最も低く、保管も安心です。財産額が大きい方や、相続人間で争いが予想される方には、公正証書遺言を強くおすすめします。
費用を抑えたいなら:法務局保管制度
3,900円という低コストで、検認不要・紛失リスクなしという大きなメリットが得られます。「公正証書遺言は費用が気になるけれど、自宅保管は不安」という方に最適です。
まず書いてみたいなら:自筆証書遺言
「遺言書を書くこと自体が初めてで、とりあえず試してみたい」という方は、自筆証書遺言から始めてみるのも一つの方法です。ただし、将来的には公正証書遺言や法務局保管への切り替えを検討されることをおすすめします。
遺言書を書く際の注意点
どの方式であっても、以下の点に注意してください。
- 不動産は登記簿の記載どおりに特定する(「自宅」ではなく、所在地・地番・地目・地積を正確に記載)
- 遺留分に配慮する(遺留分を侵害する内容だと、結局トラブルになる可能性がある)
- 遺言執行者を指定する(手続きをスムーズに進めるため)
- 定期的に見直す(家族構成や財産の変化に合わせて更新する)
まとめ
- 遺言書があれば遺産分割協議が不要になり、家族の負担が大幅に減る
- 確実さなら公正証書遺言、コスパなら法務局保管制度がおすすめ
- 検認手続きは1〜2ヶ月かかるため、検認不要の方式が望ましい
- 不動産がある場合は特に、遺言書の作成をおすすめする
出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html)、裁判所「遺言書の検認」(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html)
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