第12回:生前贈与で相続税を減らせる?2024年改正後の正しい活用法

「生前に財産を渡しておけば相続税を減らせると聞いたのですが、本当ですか?」

これは株式会社玄風にも非常によく寄せられるご質問です。生前贈与は、正しく活用すれば相続税の負担を軽減できる有力な手段です。しかし、2024年(令和6年)1月から制度が大きく変わりました。

今回は、改正後の生前贈与の仕組みと、どう活用すべきかの判断基準を解説します。


生前贈与の2つの方法

生前贈与の課税方式には、大きく分けて2つあります。

1. 暦年贈与(暦年課税)

もっとも一般的な贈与の方法です。1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った贈与額が110万円以下であれば、贈与税がかかりません。この110万円を「基礎控除」といいます。

たとえば、お父さんが子ども2人にそれぞれ毎年110万円ずつ贈与すれば、年間220万円の財産を非課税で移転できます。10年続ければ2,200万円。これだけで相続財産をかなり減らすことができます。

2. 相続時精算課税制度

60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与に使える制度です。累計2,500万円まで贈与税がかかりません(超えた分は一律20%の贈与税)。

ただし、この制度で贈与した財産は、相続が発生した時点で相続財産に加算されて相続税が計算されます。つまり「贈与税を後払いにして、相続時にまとめて精算する」イメージです。

(出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率」「No.4103 相続時精算課税の選択」)


2024年改正で何が変わった?

令和5年度税制改正により、2024年1月1日以降の贈与から、大きく2つの変更がありました。

変更1:暦年贈与の持ち戻し期間が「3年→7年」に延長

暦年贈与には「持ち戻し」というルールがあります。相続が発生する前の一定期間内に行った贈与は、相続財産に加算して相続税を計算するというものです。

これまでは相続前3年間の贈与が対象でしたが、2024年1月以降の贈与から段階的に延長され、最終的には相続前7年間の贈与が持ち戻しの対象になります。

つまり、亡くなる直前の贈与は相続税の節税効果が薄くなった、ということです。

ただし、延長された4年分(3年超〜7年以内)については、合計100万円までは加算の対象外となる緩和措置があります。

変更2:相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設

これまで相続時精算課税制度には基礎控除がありませんでしたが、2024年1月から年110万円の基礎控除が新たに設けられました。

この110万円以下の贈与は、相続時の持ち戻し加算の対象にもなりません。つまり、相続時精算課税制度を選択した場合でも、年110万円までの贈与であれば完全に非課税で財産を移転できるようになったのです。

(出典:国税庁「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」)


暦年贈与と相続時精算課税、どちらを選ぶべき?

改正後の制度を踏まえると、選択の判断基準は以下のようになります。

暦年贈与が向いているケース

  • 相続までの期間が長いと見込まれる場合(7年以上ある場合)
  • 複数の人に少額ずつ贈与したい場合
  • 柔軟に贈与先や金額を変えたい場合

相続時精算課税が向いているケース

  • 高齢で相続が近いと見込まれる場合
  • 値上がりが見込まれる財産(不動産・株式など)を早めに渡したい場合
  • 毎年110万円以下の贈与で確実に非課税にしたい場合

特に注目すべきは、相続時精算課税制度の110万円基礎控除です。暦年贈与と違い、持ち戻しの対象にならないため、相続が近い方にとっては有利に働くケースが増えました。


不動産の生前贈与は慎重に

不動産を生前贈与する場合は、いくつか注意点があります。

1. 贈与税が高額になりやすい 不動産の評価額は数百万〜数千万円になることが多く、110万円の基礎控除ではカバーしきれません。

2. 不動産取得税・登録免許税がかかる 相続であれば不動産取得税はかかりませんが、生前贈与では課税されます。登録免許税も、相続時の0.4%に対し、贈与では2.0%と高くなります。

3. 小規模宅地等の特例が使えなくなる 第4回で解説した小規模宅地等の特例は、相続で取得した場合に適用される制度です。生前贈与で渡してしまうと、この大きな節税効果が使えなくなってしまいます。

つまり、不動産については「生前に贈与するより、相続で渡したほうが有利」なケースも多いのです。


生前贈与は「早めの計画」がカギ

2024年の改正により、「とりあえず毎年110万円ずつ贈与しておけば大丈夫」という単純な対策では不十分になりました。持ち戻し期間の延長により、早い段階から計画的に実行することがますます重要になっています。

また、暦年贈与と相続時精算課税は、いったん相続時精算課税を選ぶと暦年贈与には戻れないという点にもご注意ください。制度選択は慎重に行う必要があります。

株式会社玄風では、不動産を含む相続対策のご相談を承っております。「生前贈与と相続、どちらが得なのか知りたい」「不動産をどうやって子どもに渡すのがベストか」といったお悩みは、顧問弁護士や提携税理士と連携しながらお答えいたします。お気軽にご相談ください。


次回の第13回では、「生命保険を使った相続対策」について、500万円×法定相続人の非課税枠を詳しく解説します。

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