第13回:生命保険は相続対策の最強ツール?500万円×法定相続人の非課税枠を解説
「生命保険に入っておくと相続税が安くなるって聞いたのですが、本当ですか?」
はい、本当です。生命保険の死亡保険金には、相続税がかからない「非課税枠」が設けられています。この仕組みをうまく活用することで、相続税の負担を軽くできるだけでなく、遺産分割のトラブルを防いだり、納税資金を確保したりすることもできます。
今回は、生命保険を相続対策に活用するポイントと注意点を詳しく解説します。
死亡保険金の非課税枠とは
被相続人が亡くなったことで支払われる死亡保険金には、以下の非課税枠があります。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人であれば、
500万円 × 3人 = 1,500万円
が非課税となります。
死亡保険金の合計がこの非課税枠以内であれば、相続税はかかりません。超えた分だけが課税対象になります。
(出典:国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」)
生命保険が相続対策に有効な3つの理由
理由1:非課税枠で相続税を減らせる
先ほどご説明したとおり、500万円×法定相続人の数まで非課税です。
たとえば、預貯金として1,500万円を持っていると、その全額が相続税の課税対象になります。しかし、その1,500万円で生命保険に加入しておけば、法定相続人3人のケースでは課税対象がゼロになります。同じ1,500万円でも、保有する形を変えるだけで税額が変わるのです。
理由2:受取人を指定できる
遺産分割協議では、相続人全員の合意が必要です。しかし、生命保険の死亡保険金は「受取人固有の財産」とされるため、遺産分割協議の対象外です。
つまり、「この財産はこの人に渡したい」という想いを確実に実現できます。たとえば、長男に実家を相続させる代わりに、次男を保険金の受取人にしておく、といった使い方ができます。
理由3:納税資金を確保できる
相続税は原則として現金一括納付です。不動産が多くて現金が少ない場合、相続税を払うために不動産を売却しなければならない、ということが起こります。
生命保険金は、一般的に請求から1〜2週間程度で受け取れます。相続税の申告期限(10ヶ月以内)に間に合う納税資金として、大きな役割を果たします。
注意!契約形態で税金の種類が変わる
生命保険の税金は、「契約者(保険料を払う人)」「被保険者(保険の対象者)」「受取人」の関係によって、かかる税金の種類がまったく異なります。
| 契約者 | 被保険者 | 受取人 | 税金の種類 |
|---|---|---|---|
| 父 | 父 | 子 | 相続税 |
| 父 | 母 | 父 | 所得税(一時所得) |
| 父 | 母 | 子 | 贈与税 |
相続税の非課税枠を使えるのは、契約者と被保険者が同一人物の場合だけです。上の表で言えば、1行目のパターンだけが該当します。
特に注意が必要なのが3行目のパターンです。父が保険料を払い、母に保険をかけて子が受け取ると、贈与税が課税されます。贈与税は相続税よりも税率が高いため、結果的に大きな負担になってしまいます。
すでに加入している保険がある方は、契約形態を一度確認されることをおすすめします。
(出典:国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」「No.1750 死亡保険金を受け取ったとき」)
生命保険で相続対策をする際のポイント
ポイント1:非課税枠を使い切っているか確認する
法定相続人3人なら1,500万円まで非課税です。すでに加入している保険の死亡保険金合計を確認し、非課税枠に余裕があれば追加加入を検討するのもよいでしょう。
ポイント2:終身保険を選ぶ
相続対策としての生命保険は、いつ亡くなっても保険金が支払われる「終身保険」が基本です。定期保険は保障期間が終われば保険金が出ないため、相続対策には向きません。
ポイント3:高齢でも加入できる商品がある
「もう年だから生命保険には入れないのでは?」と思われる方もいらっしゃいますが、80〜90歳でも加入できる「一時払い終身保険」などの商品があります。まとまった資金がある場合は検討に値します。
ポイント4:受取人は配偶者以外も検討する
配偶者には「配偶者の税額軽減」(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)という大きな優遇があるため、保険金の受取人を配偶者にすると非課税枠がもったいないケースがあります。お子さんを受取人にしたほうが、全体として節税効果が大きい場合もあります。
生命保険は「使わないともったいない」制度
生命保険の非課税枠は、活用しなければゼロのままです。預貯金を保険に振り替えるだけで節税できるケースもあり、相続対策としては非常に手軽で効果の大きい方法と言えます。
ただし、保険の選び方や契約形態を誤ると、期待した効果が得られないこともあります。ご家庭の状況に合わせた設計が大切です。
株式会社玄風では、不動産を含む相続全体のバランスを見ながら、最適な対策をご一緒に考えます。顧問弁護士や提携の税理士・ファイナンシャルプランナーとも連携しておりますので、「保険も含めてトータルで相談したい」という方は、お気軽にお声がけください。
次回の第14回では、「不動産の相続税評価額はどう決まるのか?」をテーマに、路線価と倍率方式の仕組みを解説します。