第15回:相続税の申告手続き完全ガイド ── 必要書類・申告先・よくある失敗

「相続税の申告って、いつまでに、どこに、何を出せばいいのですか?」

相続が発生すると、悲しみのなかでさまざまな手続きに追われます。そのなかでも特に重要で、しかも複雑なのが「相続税の申告」です。

今回は、相続税の申告に関する基本的なルールから、よくある失敗パターンまでを整理してお伝えします。


まず確認:そもそも申告が必要かどうか

相続が発生したすべての方に申告義務があるわけではありません。遺産の総額が「基礎控除額」を超える場合に、相続税の申告が必要になります。

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

たとえば法定相続人が3人なら、基礎控除額は4,800万円です。遺産の総額がこの金額以下であれば、原則として申告は不要です。

ただし、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」などの特例を適用して税額がゼロになる場合は、特例を使うために申告が必要です。申告しないと特例が適用されませんのでご注意ください。

(出典:国税庁「No.4152 相続税の計算」)


申告期限は「10ヶ月以内」

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。

たとえば、1月15日にお父さんが亡くなった場合、申告期限は11月15日となります。

10ヶ月は長いようで、実際にはあっという間です。四十九日の法要、遺産の調査、相続人の確定、遺産分割協議、書類の収集と、やるべきことが山のようにあります。早めの着手が肝心です。


申告先はどこ?

相続税の申告書は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に提出します。

相続人の住所地ではありません。たとえば、亡くなったお父さんが北九州市に住んでいて、相続人である子どもが福岡市に住んでいる場合、申告先は北九州市を管轄する税務署です。

相続人が複数いる場合も、全員が同じ税務署に申告します。

(出典:国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」)


必要書類リスト

相続税の申告に必要な主な書類を整理します。

相続人関係の書類

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(すべて)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 相続人全員のマイナンバー確認書類
  • 遺産分割協議書(+相続人全員の印鑑証明書)
  • 遺言書がある場合は遺言書の写し

財産関係の書類

  • 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 固定資産税評価証明書
  • 預貯金の残高証明書(死亡日時点)
  • 有価証券の評価明細
  • 生命保険金の支払通知書
  • 退職手当金の支払通知書
  • 借入金の残高証明書
  • 葬式費用の領収書

税務署に提出する書類

  • 相続税の申告書(第1表〜第15表のうち該当するもの)
  • 各種特例の適用に必要な添付書類

書類の量は多いですが、漏れがあると特例が適用できなかったり、あとから税務調査で指摘を受けたりすることがあります。チェックリストを作って一つずつ確認していくことをおすすめします。


申告を忘れた・遅れた場合のペナルティ

申告期限を過ぎてしまうと、以下のようなペナルティが課される可能性があります。

無申告加算税

期限後に自主的に申告した場合:納付すべき税額の5% 税務調査の通知後に申告した場合:10〜20%

延滞税

納付が遅れた日数に応じて発生します。年率は年によって異なりますが、令和6年の場合、最初の2ヶ月は年2.4%、それ以降は**年8.7%**です。

重加算税

財産を故意に隠したり、仮装した場合は**35〜40%**の重加算税が課されます。

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、期限内に申告しないと原則として適用できません。特例が使えなくなると、税額が大幅に増えてしまうことがあります。

(出典:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」「No.9205 延滞税について」)


よくある失敗パターン

失敗1:遺産分割がまとまらず申告期限に間に合わない

相続人間で話がまとまらないケースは非常に多いです。この場合、いったん法定相続分で申告・納税し、遺産分割がまとまった後に修正申告または更正の請求を行います。ただし、この方法では一部の特例が使えなくなる場合があるため、「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出を忘れないようにしましょう。

失敗2:名義預金を申告漏れにしてしまう

被相続人の名義ではなく、子や孫の名義になっている預金でも、実質的に被相続人の財産と判断されれば「名義預金」として相続財産に含まれます。税務調査で最も指摘が多い項目の一つです。

失敗3:生前贈与の持ち戻しを忘れる

相続前7年以内(改正前は3年以内)の贈与は、相続財産に加算する必要があります。第12回で解説したとおり、この持ち戻しを忘れると過少申告になってしまいます。


税理士に依頼すべきケースの目安

以下のような場合は、税理士に依頼することを強くおすすめします。

  • 遺産に不動産が含まれる場合(土地の評価が複雑)
  • 遺産総額が基礎控除額を超える場合
  • 小規模宅地等の特例など、特例の適用を検討する場合
  • 相続人が多い、または関係が複雑な場合
  • 被相続人が事業を営んでいた場合

相続税の申告は、所得税の確定申告に比べて格段に複雑です。不動産の評価一つとっても専門知識が必要であり、自力での申告はリスクが高いと言えます。


早めの相談が安心につながります

「まだ10ヶ月あるから大丈夫」と思っていると、あっという間に期限が迫ってきます。特に不動産がある場合は、評価や分割方法の検討に時間がかかるため、できるだけ早い段階から動き始めることが大切です。

株式会社玄風では、不動産の相続に関するご相談を承り、必要に応じて顧問弁護士や提携税理士をご紹介しています。「何から始めればいいかわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。


次回の第16回では、「相続放棄の手続きと注意点」について、3ヶ月の期限や手続きの流れを解説します。

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